Nextepisode’s blog

国際政治/開発/大学生

晴れぬアフリカの憂鬱

 

 

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2016年2月26日ー3月5日、私はケニア渡航した。中学生の頃から抱いていたアフリカの地に行ってみたいという憧れが実現した瞬間であった。別名「野生の王国」と呼ばれるケニアには11の国立自然公園と3つの国立保護公園があり、サファリパークと言われて真っ先にケニアを浮かべる人も少なくないだろう。

 

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私が拠点を置いた首都のナイロビは、東アフリカの政治、経済、文化の中心地である。我々はアフリカ大陸にある国というと、人々が散在し暮らしている様子を思い浮かべてきた。しかしながら、今日、アフリカでは未曾有の人口増加が深刻な問題となっている。国連の最新の予想値では2100年に世界の人口は111億人を超え、とりわけアフリカの人口は現在の12億人から50億人ほどに膨れ上がる可能性があると発表した。

 

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筆者はこのアフリカの急激な人口増加を地球規模での直近の問題であり、程度の差こそあれ、避けることはできないと覚悟している。しかしながら、世界各地で成功した人口抑制の成功体験を上手くナレッジマネジメントできれば、その衝撃を緩和することは十分に可能だと確信している。

 

本論ではアフリカ大陸で他の大陸よりも極めて人口増加が進んでいることを踏まえ、アフリカの人口増加に焦点を当て、人口増加が進むとどのような問題が浮上し、我々はどのように解決していくべきかということを探るために書く。

 

 20111031日、世界の人口は70億人を超えた。筆者が本論を書いている2017年7月の世界の人口が約741021万人だということを踏まえれば、この5年間で世界の人口は約4億1000万人増えたことになる。

 

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図1 

 

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 図2

 

 まずは図1上のベイル係数を見て欲しい。これは2015国連が発表した2100年までの人口増加予測値である。国連2050年に世界の人口は97億人を超え、2100年までには世界の人口は111億人を超えると予測している。20167月現在の人口が741000万人だということを踏まえれば、2100年までに世界の人口は1/3も増えることになる。

 

続いて図2下のグラフを見ていただこう。こちらも国連が発表したグラフで、大陸別に人口増加を予測している。このグラフを見て驚かれた方も多いと思うが、アフリカの人口だけ特筆して右肩上がりなのである。アジアの人口増加は2050−60年を境に次第に減少し始め、ヨーロッパ、北アメリカ、ラテンアメリカでは人口の上限が殆どないことが見て取れる。アフリカ大陸での人口増加率は注目に値する。

 

 

 

人口が増えるとはどういうことか。端的に言えば、失う生命より、新たに生まれる生命の方が多いということである。ではこれは問題なのか?また問題だというのであれば、何が問題なのだろうか?

 

人口が増えるということは1人当たりに行き渡る食料の量が減るということは周知の事実である。例えば、ある国の人口が10人だとして、そこに輸入された米が100Kgあるとする。この人数では1人当たり10Kgの米を得ることができるのだが、もし国の人口が20人であれば、1人当たりが得れる米の量は5Kgに減る。別言すれば、人口増加に比例して食料生産率が上昇すれば1人当たりに行き渡る食料の量に変わりはない。しかし地球は有限の場所であり、必ず限界がくる。現状でさえ人口増加率に食料生産率が追いついていながゆえ、世界各地で飢餓がや紛争が多発している。以上のことを合理的に考えれば、我々が為すべきことは食料生産量の増加ではなく、人口抑制なのだということがわかる。

 

人口問題を考える上で合計特殊出生率を分けて探ることは不可能である。合計特殊出生率とは「一人の女性が一生の間に産む子どもの数」であり、これは歴史人口学で用いられる「人口当たりの出生率」とは異なるので注意が必要だ。2015年に厚生労働省が発表した日本の合計特殊出生率1.46であった。これは日本人の女性が生涯で産む子どもの数が1.46人であることを示している。驚くべきことにこの数字は1950年代前半と比べると半減している。2015年に国連が公表した世界の出生率を見てみれば、2015年時点で世界の平均の合計特殊出生率2.5であった。大陸別にみればアフリカ4.7オセアニア2,4、アジア、ラテンアメリカ、カリブ2.2、一番低いヨーロッパで1.6であった。日本はアジアの平均よりか、また最低レベルのヨーロッパの平均以上に低い合計特殊出生率にあるのである。本論では日本の出生率の低さについてを探求するのは、別の機会に譲ることにしたい。今回注目するのはアフリカの合計特殊出生率の高さである。

 

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図3

 

ここで上の図3を見てほしい。この棒グラフは全世界で合計特殊出生率の高い国を上から20ヶ国挙げたものである。驚くべきことにトップ20の国の内、アフリカに属する国は18ヶ国もある。上位9位までアフリカの国が占める。トップはニジェール6.76にはじまり、続いてブルンジ6.093位のマリの6.06と続く。

 

ではなぜアフリカの国々は他の陸の国々が人口減少で悲鳴をあげる中、一貫して出生率が高いのか。以下で解説していきたい。

 

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なぜアフリカなのか?

 

 

なぜアフリカで著しい出生率の高さがみられるのか。筆者はアフリカでの滞在を通じて主に2つの背景があることを感じた。1つはアフリカの人々は大家族を社会的なステータスと捉えているということである。アフリカと聞いて、日本やアメリカのように高層ビルが煌びやかに輝く都市をイメージをする者などいない。

 

実際アフリカの一部の国では少しずつ工業化の動きはあるのだが、依然としてほとんどの国の主な産業は農業である。農業で生計を立てる家庭では子供が直接の労働力となる。多くの子供を産むことで労働力を増やしていこうと考えるアフリカ人は少なくない。

 

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2つ目は多くのアフリカの国が多産少死の段階に入ったということである。人口動態の変化は経済の発展に伴い、多産多死ー多産少死ー少産少死と段階を経て変化する。多産多死とは子供を産む数は多いが、死亡率も高いということである。日本は世界平均の2倍の降水量があり、行き届いた水設備がある。水道水が飲める国は世界中で15カ国あると言われているが、日本もその類に属する。対照的にアフリカの多くの国では安全な水にアクセス出来ず、汚い水が原因で毎年50万人の子供達が下痢性の病気で命を落としている。だがその死亡率も主にヨーロッパからの技術提供で少しずつではあるが改善されてきている。

 

またこれまで失っていた命も、医療技術の発展が流れ込み、乳児や幼児の死亡率が確実に減少してきた。これにより平均寿命も延びた。にも関わらず子供を産む数は変わらない、これが人口増加の2つ目の背景である。アフリカ大陸にいる12億の人口の内、半分は20歳以下であることを踏まえれば、今後累積的に人口が増えることは明らかである。

 

だが、この人口動態の3段階の変化は国が発展する過程で、どの国であっても程度の差こそあれ経験する。日本も例外ではない。日本の人口は1900年で4385万人であったが50年後の2000年には12000万人を超えている。たった50年で日本の人口は2倍以上になったのだ。日本は1880年後半に横浜にイギリスの技術者を呼び上水道と下水道を作らせた。だが当初は塩素で殺菌、減菌はしていなかったがゆえ安全な水とは到底言えなかった。殺菌などが確立され都市部に水道が普及するのが日清、日露戦争の頃。この少し後から日本の死亡率は下がり平均寿命は高くなってくる。水は生命を保つのに重要な役割を果たすのだ。今のアフリカが正しく過去の日本で、彼らは主にヨーロッパからの技術支援を受け、過去に例を見ないほどに死亡率が減り平均寿命も伸びた。一方で西アフリカでは未だ、この恩恵が流れてきていないようだ。

 

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 人口問題に有効な手段はあるのか

人口問題は主に社会的なステータスと人口動態の変化から生じると前途で述べた。ではどのような策を講じれば人口を上手く抑制できるのか。この問題への対応策は世界各国で俎上に載せられてきた。本論で全ての策を紹介していくことは不可能なのだが、ここでは2つの政策を紹介したい。女性教育へのアクセスと男女に同等の権利を与えるというものである。どちらもこれまで等閑視されてきたことだ。

 

 

 女性教育の重要性

 オーストリアにある国際応用システム分析研究所によると、教育を受ける機会のなかったアフリカの女性は平均して5.4人の子供を産むが、初等教育を終えた女性では4.3となり、中等教育を終えた女性の出生率2.7、大学卒の女性に至っては2.2と教育を受けなかった女性と比べて、生涯に産む子どもの数が3人ほど減る。教育を通じて子供が受ける恩恵は枚挙にいとまがない。その中でも正しい避妊方法の知識を身につけることは、子どもの親も知らない場合が多いので、学校教育を通じて身につけることができるのは素直に大きいと言える。マラウィでは政府が資金を助成し子どもの進学率を向上させることにより初交年齢、結婚年齢を遅らせ、10代の妊娠の減少に成功した。子どもを教育に従事させる期間の長さに概ね比例して初交年齢や、初婚年齢が高くなることは日本を含めた先進国にも当てはまる。日本では暫し初婚年齢の高さ(晩婚化)が問題視されているが、晩婚化になった背景には女性の大学進学率が上昇したことが挙げられる。それは時に問題になるのだが、こう言ったアフリカなどの地域では望ましい傾向なのである。私が訪れたケニアでは政府助成による避妊具や避妊薬の割引クーポンを配布し、低所得層にでも使用出来るように国が指揮をとって働きかけた。また健康アドバイザーが地方へ出向き、避妊方法や避妊具の使用方法を共有し、避妊具を配布した。これによりケニアでは人口抑制に成功した。同様の動きは隣国エチオピアや西のガーナでもみられる。このように正しい知識を共有することにより成功した事例がアフリカの国にもみられる。

 

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女性の権利を見直す。

 

重男軽女という言葉がある。これはもともと中国の言葉で、男性が女性よりも地位が高いと言った意味でしばし使用される。世界を見渡せば、女性だという理由で挑戦する権利や選択する権利を奪われた女性たちがいる。彼女たちに男性同様の権利を与えることができれば、教育へのアクセスが増え、社会的地位も高くなり、結果として必然的に出生率の低下につながるだろう。だが上記でも少し述べたのだが、出生率の低下は常に望まれるものではない。行き過ぎた人口抑制は中国のような急激な高齢化を促進する。一方で、経済的に余裕のある家庭であれば、通常よりも多くの子供を産んでも問題ないと私は考えている。

 

まとめ。

 

 今日では多くの先進国で出生率の低下にはじまる少子高齢化が懸念されている。一方で、今回挙げたアフリカ諸国や一部東南アジア、南アメリカの国々のように高い出生率が問題となっている国もある。出生率の多い理由として本稿では女性の教育の問題、権利問題、その背景について触れた。何かのきっかけて本稿を読み、アフリカの人口問題への関心が深まれば望外の幸せである