Nextepisode’s blog

院生(M1) 専門-開発経済/国際関係

小さな声が集まって社会を変える

 

新しく越してきたアパートの近くに読書カフェがある。コーヒーを頼むと店に置いてある本を読むことが許される。店には常連客の人たちが読書会を開催するなど、聞くところによると、毎週日曜日の朝は各々が好きなテーマを持ち寄って世間話をする場所にもなっているそうだ。

 

先週の日曜日に店に立ち寄ると、途中から私の祖父と変わらぬ年齢の老人が入ってきて、私たちの会話に聞き耳をたて一言「戦前を見ているようです」と呟いた。参加者の年齢層が比較的高い我々でさえ、その老人が呟いた言葉の意味が理解できなかった。その老人が店を去る際に置いていった一冊の本を皆で流し読みすると、彼が呟いた言葉の意味が少しだけわかったような気がした。

 

いま、民主主義が静かに殺されようとしている。誰も戦前のように貧しい暮らしをせず、汚い食べ物を口にせず、電車では皆が当たり前のようにスマートフォンを片手に没頭し、ゲームや動画鑑賞を楽しんでいる。それでも、官邸にマスコミは手の上で操られ、政権を告発した人々は追放され、誰も権力を監視しない。

 

去年、京都駅の前で秘密保護法のデモに参加した時、私と同じく初めてデモに参加した人たちがいた。皆、何をしたらいいのかわからないけど、居ても立ってもいられなかったのだ。そういう不安を時代が抱えているのだと思った。

 

あれからいまだ、安倍政権は続き、去年は共謀罪が成立した。本来ならば審議にいくら時間を費やしても過ぎるはずはないはずなのに、法案成立から逆算した結果ありきの討論に終始した。

 

喫茶店で常連の一人が「ここでやっている読書会も共謀罪で引っかかりますね」と力なく言い、一瞬笑いが漏れたが、その刹那みんなが真顔になった。

 

再度明るみに出た家計学園問題で、「政府への不信を招いた」とする安倍首相の会見は、実質的には何も謝らない空虚な言葉の羅列だった。利己的で権勢欲の強い者が、それを包み隠そうともせず、それを恥とも思わずに、自分に弓を引く人間を闇に葬っていく。そこにプライドを微塵ももたない。

 

私はこれまでの自民党政権を積極的には評価していないが、それでも否が応でも評価する部分もあった。今の自民党は、それ以上下はないというレベルにまで堕ちてしまった。

 

私の言葉は所詮一億分の一であり、発する言葉は遠くへは届かないが、だが、これまでの無自覚と無責任が積み重なり今日の安倍政権を誕生させたのではないかと胸が痛む。誰でも、何歳からでも、身近な人と社会について話し合える時間と場所を持てるゆとりが、日本にはできればいい。

 

桜の木はそうした時代を横目に今年も見事な花を咲かせた。この木のように素直な社会になればと、入学式の桜を眺めた。

 

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